日本語と大きく違うフランス語の発音
この記事ではフランス語の発音について、発音ルールや表記の仕方、口の開け方など、日本語とは大きく異なる点を中心にできるだけ分かりやすく解説しています。
フランス語の発音記号はあえて使わず、カタカナだけで本サイト独自に工夫して表記しています。
例にあげた単語のルビについては「本サイトのルビについて」も参照しながら読み進めてください。歌の練習を始めてからも何回でも読み返して、完全にマスターするまで発音を確認されることをお勧めします。
時代や地域、出身地で異なるフランス語の発音
なおフランス語の発音は、人や地域、時代などによって様々な違いが見られます。フランスは移民の多い国なので、出身地域によるイントネーションの違いがあったり、世界各地のフランス語圏諸国による発音の違いも見られます。
例えば私の大好きな歌手の一人である Dalida ダリダ(エジプト育ちのイタリア系移民)の発音には相当の訛りがありました。そのほかの有名歌手の中にもベルギーやカナダ、ギリシャ、アルジェリアなど様々な国の出身者がいますので、出身地など歌手の背景を知ることも曲の理解につながると思います。
本サイトは基本的に現代のパリを中心とする北部フランスの発音をベースにしていますが、曲や歌手によってはバリエーションのある場合も出てくると思います。
発音しない文字について
日本語は単語のすべての文字を発音しますが、フランス語には以下のように発音しないケースがあります。
語尾の子音は発音しない
基本的に単語の末尾にある子音は発音しません。ただし例外もあるので本サイトのルビ通りに発音しましょう。
Paris パり(パリ)
objet オ ブジェ(物体)
carrot キャろ(ニンジン)
発音する単語
chic シック(シック)
語尾の「e」「es」は発音しない
基本的には発音しませんが、弱く「ウ」「ウォ」「ウァ」と発音されたりすることもあります。
独特の発音をする「押韻」について
またシャンソンは詩の延長ということから、一行のフレーズの最後の語尾にある「e」については、押韻としてかなり誇張して発音することがあります。
例えば入門曲の「La vie en rose バラ色の人生」の中にある「vie」は、通常は「ヴィ」と発音しますが、エディット・ピアフは「ヴィヤ」と歌っています。
シャルル・トレネは「La mer ラ・メール」の中で「pluie プリュイ」を「プリュイーユ」「infinie ア~フィニ」を「ア~フィニーユ」、歌詞の最後にある「vie」を「ヴィーヤ」と歌っています。事例があるときにはご案内していきたいと思います。
単語の中にある「e」の発音についてはルールが複雑なので、ルビの通りに読んでください。
「-er」動詞や、ほとんどの名詞、形容詞の語尾につく「-er」は「エ」と発音して「r」は発音しませんが、
aimer エメ(愛する)
parler パるレ(話す)
一部「エーる」と発音するものもあります。
mer メーる(海)
hiver イヴェーる(冬)
「h」は発音しない
「h」は基本的にはまったく発音しません。
例えば、
hotel オテル(ホテル)
Hayashi アヤシ(林、日本人の姓名)
Hermès エるメス(ブランド名)
というようになります。
動詞の複数3人称語尾「-ent」は発音しない
「er」「ir」で終わる動詞の複数3人称の語尾「-ent」は発音しません。
donnent ドンヌ(与える)
finissent フィニス(終わる)
鼻母音について
もっともフランス語っぽい発音の一つに「鼻母音」があります。「en, em, an, on, in, ain, un, um」などの発音ですが、3種類あります。
通常のカタカナ表記では「フろンス」「ションソン」など「ン」を入れますが、実際の鼻母音は「ン」は発音しない(口を閉じない)で、鼻から息を抜きながら母音を発音します。軽く鼻腔を閉じて息を抜くイメージです。
フランス語の発音記号では、鼻母音記号の頭に「~」が付くことから、本サイトでは母音や子音のカタカナ表記の横に「~」を添えて鼻母音を表記しています。
① 鼻母音「an, em, en, em」の発音
「an, em, en, em」は、口を大きく縦に開けた「ア~」と「オ~」の中間のような音です。口を大きく開いた「ア」の形から両頬をすぼめるイメージです。本サイトでは ③の「on, om」と区別するために、青字で「オ~」と表記しています。
② 鼻母音「in, im, ein, ain, un, um」の発音
「in, im, ein, ain, un, um」は口を横に開いた「エ」の形で「ア~」と鼻から抜いて発音します。
③ 鼻母音「on, om」の発音
「on, om」は、口を丸くすぼめて鼻から「オ~」と発音します。
これも日本人には難しい発音の一つですが、とても重要なので常に意識しながら発音して、少しずつでもマスターしていってくださいね。
実はお恥ずかしながら、自然に発音できるようになるまで、私の場合は2年以上もかかってしまいました。
「鼻母音」のルビ表記については「本サイトのルビについて」も必ずお読みください。
単語をつなげて発音することについて
フランス語では、単語と単語をつなげてなめらかに発音することが多々あります。これには次のような様々なルールがあります。
本サイトではすでに単語をつなげた形でルビをつけてありますので、その通り読んでいただけばOKです。
リエゾンとアンシェンヌマンの位置には下線を引いてありますので、どんなときにつなげるのか、どんな発音になるのか、少しずつ覚えていきましょう。
ただし、歌手により、また同じ歌手でも時により、つなげ方が異なる場合もありますし、時代による変化もあるようです。
エリズィヨン
「e」や「i」を省いて、アポストロフ「'」をつけて次の母音と続けて読むこと。
que elle ク エル ⇒ qu'elle ケル(彼女が~すること)
je ai ジュ エ ⇒ j'ai ジェ(私は持ってます)
si il スィ イル ⇒ s'il スィル(もし彼が)
リエゾン
本来発音しない語尾の子音「s, x, t, d」と、次の単語の母音をつなげて発音すること。「s, x」は「ズ」、「t, d」は「トゥ」と発音します。
nos amis ノ アミ ⇒ ノザミ(私たちの友だち)
vous êtes ヴー エットゥ ⇒ ヴーゼットゥ(貴方は~です)
aux yeux オー イウ ⇒ オーズィウ(目に)
quand elle コ~ エル ⇒ コ~テル(彼女が~するとき)
アンシェンヌマン
発音される語尾の子音を、次の単語の母音とつなげて発音すること。
elle est エル エ ⇒ エレ(彼女は~です)
il y a イル イ ア ⇒ イリヤ(~があります)
フランス語の特殊文字について
フランス語には特殊記号がついた文字がありますが、これはアクセントを意味するものではなく、ABCアルファヴェの一部です。
なお、フランス語の単語には英語のように決まったアクセントはありません。歌の中ではメロディや拍子、歌詞のフレーズの流れなどによってアクセントができます。
スマホ入力で特殊文字を入力するには、英字入力にして「a, c, e, i, o, u」をそれぞれ長押しすると特殊文字の候補が出てくるので、その中から選択できます。
アクサン テギュ (é)
「é」は口をやや狭くして短めに「エ」と発音します。
アクサン グラーヴ (è, à, ù)
「è」は口をやや開けて伸ばし気味に「エー」と発音。
「à」は「a」 と同じ「ア」と発音します。
「ù」は口を突き出して伸ばし気味に「ウー」と発音。
アクサン シルコンフレクス (â, ê, î, ô, û)
「â, î, ô, û」は「a, i, o, u」の発音と変わりはなく、
「ê」は、上記「アクサン グラーヴ (é)」と同じように、口をやや開けて伸ばし気味に「エー」と発音します。
トレマ (ë, ï, ü)
直前の母音とくっつけないで切り離して発音することを意味します。
naïve ナイーヴ(ナイーブ)
égoïsme エゴイズム(エゴイズム)
セディーユ (ç)
「ca」は「カ」、「co」は「コ」、「cu」は「キュ」と発音しますが、
セディーユが付くと「ça」は「サ」、「ço」は「ソ」、「çu」は「スュ」と発音します。
français フろ~セ(フランス語)
comme ça コンム サ(そのように)
「œ」について
oとe が並ぶ場合には、 o と e をくっつけた「œ」 という合字を使います。
cœur クァーる(心、心臓)
œuf ウフ(卵)
この記事で後述する「ue, eu, œ, œu」の発音の解説を参照してください。
フランス語の母音の発音について
フランス語の母音の中で特に発音に注意が必要なものをご紹介します。
「a」と「i」「y」の発音
「a」は「ア」とのみ発音し、英語のようにエイとは発音しません。
「i」「y」は口を横に広げて「イ」とハッキリ発音します。
「ai, ei」の発音
「ai, ei」は、アイ、エイではなく「エ」と発音します。
「ou」と「u」の発音
「ou」は唇を突き出して、日本語より強く「ウ」「ウー」と発音します。
groupe グるゥプ(グループ)
soupe スゥプ(スープ)
Louvre ルゥヴる(ルーブル)
「u」は「ou」よりもっと口をすぼめて「ユ」と鋭く発音します。
buffet ビュフェ(ビュッフェ)
fondu フォ~デュ(フォンデュ)
unique ユニーク(ユニーク)
本サイトではルビを見ながら自然に強く発音するように、「ウゥ」「ユゥ」とルビ表記する場合があります。
「au」「eau」の発音
「au」「eau」は「オ」「オー」と発音します。
restaurant れストろ~(レストラン)
café au lait カフェ オレ(カフェオレ)
Bordeaux ボるドー(ボルドー)
「oi」「oy」の発音
「oi」は「ウワ」と発音します。例えば「moi」の発音記号は「mwa」となるように、子音の「m」と「wa」の間には母音を入れません。「oy」も同様です。本サイトではそのことを意識して発音するように、「モワ」ではなく「ムワ」とカタカナ表記しています。
moi ムワ(自分)
foie gras フワグら(フォワグラ)
Renoir るヌワーる(ルノワール)
「oy」は「オワイュ」と発音します。
voyage ヴォワイヤージュ(旅行)
royal ろワイヤル(王立)
「-ille」「-ail、-aiile」「-eil、-eill-」の発音
「-ille」は「イーユ」と発音しますが、「イル」と発音する場合もあります。
fille フィーユ(女の子)
ville ヴィル(町)
「-ail,-aile」は「アイユ」と発音します。
travail トらヴァイユ(仕事)
Versailes ヴェるサイユ(ヴェルサイユ)
「-eil, -eill-」は「エイユ」と発音します。
soleil ソレイユ(太陽)
Marseille マるセイユ(マルセイユ)
「ue, eu, œ, œu」の発音
「ue, eu, œ, œu」は「ウ、エ、オ」の中間のような音で2種類あります。日本人にとって難しい発音の一つです。
一つは、あまり口を開けない「オ」の形で力を抜いて「エ」というイメージの発音。本サイトでは「ウ、ウー」または「ウォ」などと表記しています。
Europe ウーろップ(ヨーロッパ)
bleu ブルォ(青)
もう一つは、口を横にやや大きく開いた「エ」から、両頬をすぼめてハッキリ強めに「オ」というイメージの発音です。本サイトでは「ウァ」と表記しています。
シャンソンの歌詞の中に度々登場する「cœur(心)」は「クァーる」と表記しています。人によっては「キャーる」「クェーる」と聞こえる場合もあります。
œuvre ウァーヴる(作品)
neuf ヌァフ(新しい)
fleur フルァーる(花)
フランス語の子音の発音について
フランス語の子音については、日本語にはない子音の発音など以下のポイントを確認してください。
それ以外の子音についてはルビ通りでほぼOKですが、全体的に日本語よりもハッキリと発音するように心がけてください。
「r」の発音
「r」は「L」の発音と区別するために、「ら、り、る、れ、ろ」と赤で表記。日本人には難しい発音の一つですが、舌先を下の歯の裏につけて、喉の奥を震わせて発音します。
ただし、前後の子音によって硬い「r」と柔らかい「r」の二通りの発音があります。完璧を目指す方のために、フランス人の先生に教わって特訓したことを思い出しながらご説明しますね。
舌先を下の歯の裏につけて動かさないのは同じですが、声帯を使うかどうかが異なります。
① 無声の子音(「t, p, ch, s, k, q, c, f」など)が「r」の前後にあるときは硬い「r」となり、声帯を使わずに喉だけを震わせて発音します。うがいをするような日本語の「ガ行」の音に聞こえる場合があります。
② 有声の子音(「d, b, j, z, g, v, l, m, n」など)が「r」の前後にあるときや、語尾に「r」があるときは、柔らかい「r」となり、舌の奥を少し上げて声帯を軽く震わせて発音します。「ハ行」の音に近いかもしれません。
さらには、本来は(2)の柔らかい「r」のときでも、次に続く単語の語頭に無声の子音があって続けて発音する場合には硬い「r」になり、続けて発音しない場合は柔らかい「r」のままになる、ということです。
初心者の皆さまにはちょっと難しいかもしれませんが、よく聴いて少しずつでも意識しながら真似ていかれるとよいと思います。
ちなみに私の場合は法則に基づいて、初めに歌詞シートの硬い「r」に印を入れるようにしています。
「r」の発音は特に重要なため、本サイトでは独自のルビ表記をしていますので、「本サイトのルビについて」も必ずお読みください。
「f」「v」の発音
「f」「v」ともに、上の歯を下唇に軽く当てて、
「f」は「ファ、フィ、フ、フェ、フォ」
「v」は「ヴァ、ヴィ、ヴ、ヴェ、ヴォ」
などと発音します。
「qu」の発音
「qu」は「k」や「c」と同じように発音するので、
quand は クアン ではなく「コ~」(いつ)
qui は クイ ではなく「キ」(だれ)
quel は クエル ではなく「ケル」(何)
語尾の「que」 は「ク」と発音します。
musique ミューズィク(音楽)
masque マスク(マスク)
語尾の「e」は基本的には発音しませんが、「クォ」と聞こえることもあります。
「gn」の発音
「gn」 は「ニュ」と発音します。
cognac コニャック(コニャック)
Bourgogne ブるゴーニュ(ブルゴーニュ)
「tu」「ti」の発音
「tu」は「チュ」か「テュ」、または中間の音で、発音に個人差があります。
「ti」は「ティ」と「スィ」の2通りの発音があります。
petit プティ、プチ
égyptien エジプスィヤ~(エジプト人)
communication コミュニカスィヨ~(コミュニケーション)
子音と子音が続く発音について
日本語では子音の後に必ず母音が入りますが、フランス語では子音と子音が続く単語がたくさんあります。その場合は子音同士を素早く続けて発音し、子音と子音の間には母音を入れません。
glace グラス(氷)は、「gラス」
lettre レットる(手紙)は、「レッtる」
bruit ブりュイ(ノイズ)は、「bりュイ」
のイメージで発音しましょう。本サイトの表記も今後このように変更することも検討中です。
以上で主なフランス語の発音のポイントについてご紹介してきました。ため息が出てらっしゃるかもしれませんが、取りあえずはざっと頭に入れて、少しずつでよいので歌いながら発音練習をしていくしかないと思います。
難しい発音が出てきたら、ひたすら繰り返し練習をすることで、必ずマスターできますので。私自身もまだまだ修正~練習~の繰り返し途上です。一緒に頑張りましょう!
本サイト独自のルビのつけ方につきましては、「本サイトのルビについて」を必ずお読みください。
フランス語の発音についてさらに詳しく学びたい方のために、参考になるサイトの中から分かりやすいものを今後ご紹介していきたいと思っています。
- フランス語で歌うために
- フランス語の発音のポイント
- 本サイトのルビについて
- 歌う前の準備~歌ってみよう
- カラオケで歌ってみよう
- フランス語でカラオケができる Karafunカラファン
- ピアノ伴奏で歌ってみよう
- シャンソンを習おう