C'est le printemps 春なのに

2026-03-06

Jean Sablon ジャン・サブロンの「C'est le printemps 春なのに」

 

私の心はなぜか重く、苦しい

すべてから逃げ出したい

花が咲き乱れ

光あふれる春が来たというのに...

 

厳しかった冬にようやく別れを告げて、春の息吹が感じられる季節になりました。

 

今回ご紹介する Jean Sablon ジャン・サブロンの「C'est le printemps 春なのに」は、

単純に春が来た喜びを歌うのではなく、

明るく美しい春の世界と、なぜか悲しく、苦しい自分の気持ちを対比させて描いた、美しい曲です。

 

1920年代から60年以上にわたり、国際的大スターとして活躍し、

フランスで流行し始めたジャズと、シャンソンを融合させた新しい音楽に、大きな影響を与えたサブロンの、甘く優しい歌声をお楽しみください。

 

 

「C'est le printemps 春なのに」ってどんな曲?

 

作詞   Jean Sablon ジャン・サブロン

作曲  Richard Rodgers リチャード・ロジャース

歌  Jean Sablon ジャン・サブロン, Jacqueline François ジャクリーヌ・フランソワ, Isabelle Aubret イザベル・オーブレ, Stacey Kent ステイシー・ケント

発表年  1947年

 

歌詞はこのような内容です

 

嵐の中の葦のように揺れながら

今は何もかもが私をいら立たせる

世界は私をときめかせてはくれない

こんなに美しい春の日なのに

 

疲れ果て、がっかりして、勇気もなく

何が待っているのかもわからず焦っている

心の中に嵐が近づいてくるのを感じる

こんなに美しい春の日なのに

 

ここから遠く離れて

日々の生活から逃れたい

そうやって旅立てば

愛が見つかるのだろうか

 

子どものころのマロニエのつぼみ

サンザシ、ヒヤシンス、白いライラックは

愛の歌を歌ってくれるけれど

私の心には届かない

あなたは春を疑うだろうか?

 

すべてがあんなに楽しそうなのに

私は悲しい

この苦しみはどこから来るのだろう?

ああ友よ、春なのに

 

すべてがあんなに楽しそうなのに

私は悲しい

この苦しみはどこから来るのだろう?

ああ友よ、春なのに

 

 

春の明るさと、心の中の悲しみを対比させた歌です

Jean Sablon ジャン・サブロンの「C'est le printemps 春なのに」は、

春の喜びをそのまま歌った曲ではなく、

美しく花が咲き乱れている春の世界の明るさと、

心の中の不安や孤独感との対比を描いた作品です。

 

自然界は春のロマンスを歌っているけれど、私の心には届かない。

心が乱れて、満たされず、どうしてよいのかわからない。

「春なのに、なぜこんなに悲しいのだろうか?」と自問自答する私。

外界の美しさは、心の中の痛みを癒すことはできない。

 

春は、本来は希望にあふれる恋の季節なのに、私にはそれがなく "愛" を求めている、ということかもしれないし、

春特有の単なる感情の揺れなのかもしれない。

 

いずれにしても光あふれる春の明るさがあるからこそ、相対的に自身の辛さや悲しみがより強く感じられる、

とても繊細で複雑な、大人の心情を描いた美しい作品です。

 

映画「ステート・フェア」主題歌のフランス語版です

「C’est le printemps 春なのに」は、

1945年公開のアメリカのミュージカル映画「State Fair ステート・フェア」(ヘンリー・キング監督)の主題歌である

「It might as well be spring(春になったようだ)」(オスカー・ハマースタイン2世作詞、リチャード・ロジャース作曲)のフランス語版。

同年のアカデミー主題歌賞を受賞し、その後さまざまな歌手によりカヴァーされて、ジャズのスタンダードナンバーとなった曲に、

ジャン・サブロンがフランス語の歌詞をつけたものですが、歌詞は直訳ではなく、自由に翻案された内容になっています。

 

アメリカ版歌詞では、

主人公のマージーという十代の娘が、何となく落ち着かず、理由もなくそわそわしているけれど、なぜこんな気持ちなのかわからない。

でも最後に「たぶん恋をしているからだ」と気づきます。

 

ここでの "春" は、恋の目覚めの比喩となっていて、

フランス語版の少し重たい内容よりも、恋にワクワクする軽やかさがあります。

 

映画の中で、マージー役の Jeanne Crain ジーン・クレインが歌う場面が入った動画を見つけました。歌の吹き替えは Louanne Hogan ルアン・ホーガンが担当しています。

 

パリ的エレガンスを象徴するジャン・サブロンが歌っています

フランス近代シャンソンの歴史を語るとき、多くの有名歌手の中で、歌い方そのものを大きく変えた人物がいました。

それが Jean Sablon ジャン・サブロン(1906年~1994年、本名 Jean Georges Sablon ジャン・ジョルジュ・サブロン)です。

上品で洗練された雰囲気と、正確なフランス語の発音で、静かに語りかけるような歌い方が魅力でした。

 

17歳のときにパリのオペレッタでデビューし、ジャン・ギャバンやシャルル・ボワイエ、ダミアなどと次々に共演して音楽キャリアを重ねるとともに、

俳優として映画デビューも果たし、ラジオの歌謡ショーや番組司会者にもなって活動の幅を広げていき、人気スターとなります。

 

ジプシー・ジャズの創始者ジャンゴ・ラインハルトとのコラボが、新しいフランス音楽を生みだしました

1930年代、アメリカからやってきたジャズの熱気に包まれていたパリ。人々は「新しい音」を求めていました。

よりモダンな音楽を目指し、ジャズ的要素を取り入れたいと考えていたサブロンが、

新しくオープンしたキャバレー、ラ・ボワット・ア・マテロで出会って魅了されたのが、

火事で左手の指が不自由になりながらも、独自の奏法を生み出した天才ギタリストで、スウィング・ジャズの革命児だった、若き日の Django Reinhardt ジャンゴ・ラインハルトでした。

 

自由で、情熱的で、予測できない、スウィング感あふれるジャンゴのギターと、

サブロンの親密で語りかけるような歌声とが絶妙に調和したのです。

洗練された都会的エレガンスと、自由奔放なボヘミアンという、対照的な二人の出会いは、シャンソンとジャズを結びつける重要な出来事でした。

サブロンの静かな歌声に、ジャンゴのスウィングが重なったとき、パリの夜に新しい風が吹いたのです。

 

サブロンは、ジャンゴの演奏でレコーディングした初めてのアーティストとなりました。

二人のコラボレーションは3年ほどの短い期間でしたが、シャンソンにスウィングが加わったことや、

ジャズが芸術として認められ始めたことを示して、その後のフランス音楽に大きな影響を与えました。

 

1934年から35年にかけてのジャンゴ・ラインハルトとのコラボ曲7曲を含む、サブロンの17曲をフィーチャーした再生リストのリンクです。

 

ジャンゴ・ラインハルトとジプシー・ジャズについては、「J'aime plus Paris もうパリは好きじゃない」の記事でもご紹介しています。

 

フランスで初めてマイクを使った革新者でもあるサブロン

サブロンは単なる人気歌手ではなく、フランスの歌唱スタイルを現代的なものへと導いた先駆者でもありました。

当時の歌手はステージでオペラのように大きな声で歌っていましたが、

彼は、アメリカの歌手ビング・クロスビーの影響を受けて、1936年にフランスで初めてマイクを使用した歌手となり、

内面的な感情を、ニュアンスをもたせながら繊細に表現する歌い方を生みだしたのです。

 

レコードは世界中で何百万枚も売れて、世界各地でコンサートツアーを行って喝采を浴び、ラスベガスでは自分のショーを持つ初めてのフランス人となるなど、

国際的に活躍したフランス人として、最も高く評価された男性歌手の一人となったのでした。

 

 

「C'est le printemps 春なのに」の動画

 

静かに語りかけるようなサブロンのリマスター版音源です

国際的に一世を風靡したサブロンの、甘く優しい、魅力あふれる歌声に癒されます。

C'est le printemps - Jean Sablon (1952-Remastered 2026)

 

ジャクリーヌ・フランソワが伸びやかに歌っています

軽やかなアレンジの Jacqueline Francois ジャクリーヌ・フランソワのカヴァーです。

C'est Le Printemps - Jacqueline Francois (1957)

 

アップテンポで楽しいイザベル・オーブレの歌です

Isabelle Aubret イザベル・オーブレが、ラテン風の軽快なアレンジで、心地よく聴かせます。

C'est le printemps - Isabelle Aubret

 

ステイシー・ケントがお洒落に歌っています

初めはゆったりと、途中から軽快なボサノバ風になる Stacey Kent ステイシー・ケント版。

フランス語の歌ばかりを集めたアルバム「Raconte-moi 教えて」に収録されています。

C'est le printemps – Stacey Kent (2010)

 

 

Youtube活用メモ

一緒に歌う場合は、テンポを遅めにしたり、ループ再生にすると便利です。

画面をクリックすると右下に出る「歯車マーク」をクリックして、「再生速度」を 0.75 か 0.5 に設定しましょう。

「歯車マーク」の「その他のオプション」(パソコンの場合は右クリック)から「ループ再生」をオンにしましょう。

Youtubeサイトに移動せずに本サイト上で再生するとCMが入りません。

※すぐ歌われる場合は、こちらをクリックしてください。

 

本サイト独自の発音表記について

フランス語をできるだけ正しく発音するために、次のことをご確認ください。

 

シャンソニアネット独自のルビ表記と発音について

r」は「」とひらがなの赤字で表記舌先を下の歯の裏に当てて、喉を震わせて発音します。

鼻母音」は「」を添えて表記鼻から息を抜きながら発音します。

an, em, en, em」は口を大きく縦に開けた「オ」の形で「ア~」と発音オ~」「コ~」「ソ~」「ト~」など青字で表記。「r」につくときは「」。

②「inim, ein, ain, un, um」は口を横に開いた「エ」の形で「ア~」と発音

③「on, om」は、口を丸くすぼめて鼻から「オ~」と発音

 

⇒ その他の発音など、詳しくは「フランス語発音のポイント」「本サイトのルビについて」「歌う前の準備~歌ってみよう」をご参照ください。

 

リエゾンやアンシェンヌマンについて

単語を続けて発音する「リエゾンやアンシェヌマン」の箇所には下線を引いてあります。歌手により異なる場合もあります。

 

 

「C'est le printemps 春なのに」フランス語歌詞

単語一つずつではなく、歌のメロディやフレーズに合わせてルビの区切りを入れてあります。

同じ歌手でもアレンジやバージョンによって、また別の歌手が歌う場合なども、歌詞が異なる場合があります。

 

印刷用歌詞 PDF(ルビつき&ルビなし)

印刷する場合はフランス語歌詞(ルビつき&ルビなし)のPDFを下記よりダウンロードしてカラー印刷してください。

「C'est le printemps 春なのに」歌詞PDF(ルビつき)

「C'est le printemps 春なのに」歌詞PDF(ルビなし)

 

ルビつきフランス語歌詞

短めにフレーズを区切って表記していますが、スマホの場合は画面を横長にしてスクロールしながらご覧ください。

 

「C'est le printemps 春なのに」

 

Agitée comme un roseau dans la tourmente

アジテ コマ~ ワゾォ ド~ ラ トゥモ~トゥ

Tout m'énerve et tout m'irrite en ce moment

トゥ メネヴェ トゥ ミト~ ス モモ~

Le monde me désenchante

ル モ~ドゥ ム デゾ~ショ~トゥ

Par ce beau jour de printemps

ス ボォ ジュゥー ドゥ プト~

 

Fatiguée, désabusée et sans courage

ファティゲ、デザビュゼ エ ソ~ クゥージュ

Impatiente je ne sais plus

ア~パスィオ~トゥ ジュ ヌ セ プリュ

ce qui m'attend

ス キ マト~

Je sens arriver l'orage

ジュ ソ~ヴェ ロージュ

Par ce beau jour de printemps

ス ボォ ジュゥー ドゥ プト~

 

Je voudrais me sentir loin d’ici

ジュ ヴゥドゥソ~ティー ルワ~ ディスィ

Fuir la vie de chaque jour

フュイー ラ ヴィ ドゥ シャク ジュゥー

Et peut-être en m'évadant ainsi

エ プゥテートゥ メヴァド~ タ~スィ

Y trouverais-je l'amour

イ トゥゥヴ-ジュ ラムゥー

 

Les bourgeons des marronniers

レ ブゥジョ~ デ マニエ

De mon enfance,

ドゥ モ~ノ~フォ~ス、

l'aubépine la jacinthe,

ロベピーヌ ラ ジャサ~トゥ、

et les lilas blancs

エ レ リラ ブロ~

En vain me chantent leur romance

オ~ ヴァ~ ム ショ~トゥ ルァーる ろモ~

Douterais-tu du printemps?

ドゥトゥ-テュ デュ プト~

 

Tout est si joyeux

トゥ スィ ジュワイゥ

Pourtant je suis malheureuse

プゥト~ ジュ スュイ マルゥゥズ

D'où me vient tout ce tourment?

ドゥ ム ヴィア~ トゥ ス トゥモ~

Ô mon ami, c'est le printemps

オォ モ~ミ、セ ル プト~

 

Tout est si joyeux

トゥ スィ ジュワイゥ

Pourtant je suis malheureuse

プゥト~ ジュ スュイ マルゥゥズ

D'où me vient tout ce tourment?

ドゥ ム ヴィア~ トゥ ス トゥモ~

Ô mon ami, c'est le printemps

オォ モ~ミ、セ ル プト~

 

 

フランス語歌詞(ルビなし)

リエゾン、アンシェンヌマンの箇所に下線をつけてあります。

 

"C'est le printemps"

 

Agitée comme un roseau dans la tourmente

Tout m'énerve et tout m'irrite en ce moment

Le monde me désenchante

Par ce beau jour de printemps

 

Fatiguée, désabusée et sans courage

Impatiente je ne sais plus ce qui m'attend

Je sens arriver l'orage

Par ce beau jour de printemps

 

Je voudrais me sentir loin d’ici

Fuir la vie de chaque jour

Et peut-être en m'évadant ainsi

Y trouverais-je l'amour

 

Les bourgeons des marronniers

De mon enfance,

l'aubépine la jacinthe,

et les lilas blancs

En vain me chantent leur romance

Douterais-tu du printemps?

 

Tout est si joyeux

Pourtant je suis malheureuse

D'où me vient tout ce tourment?

Ô mon ami, c'est le printemps

 

Tout est si joyeux

Pourtant je suis malheureuse

D'où me vient tout ce tourment?

Ô mon ami, c'est le printemps