J'aime plus Paris もうパリは好きじゃない

2025-11-23

Thomas Dutronc トマス・デュトロンの「J'aime plus Paris もうパリは好きじゃない」

 

灰色の空

みんなイライラして

ストレスがいっぱい

 

どこもつまらないし

息がつまりそう

格差も広がった

 

古きよきパリはもうない

ここから逃げ出して

静かに暮らしたい

 

…それでもパリは

一番好きな街なんだけど

やっぱりもうパリは好きじゃない

 

 

Thomas Dutronc トマ・デュトロンの「J’aime plus Paris もうパリは好きじゃない」。

"大好きな街だけれど、もう逃げだしたい" とパリに対する相反する気持ちを、

ジャック・デュトロンとフランソワーズ・アルディの息子でもあるトマが、

ジプシー・ジャズのサウンドにのせて、ギター弾き語りで軽快に歌います。

 

 

「J'aime plus Paris もうパリは好きじゃない」ってどんな曲?

 

作詞&作曲  Thomas Dutronc トマ・デュトロン

歌  Thomas Dutronc トマ・デュトロン

発表年  2007年

Karafun 収録曲

 

歌詞はこのような内容です

 

ガソリンを満タンにして

バカンスのことを考えている

なんだか機嫌が悪い

でも、そういうのは僕だけじゃない

 

空はどんより

人々もイライラしている

僕は急いでいて

ストレスもいっぱい

 

もうパリは好きじゃない

どこに行ってもつまらないし

人が多すぎる

他人の人生なんてどうでもいい

時間もないし

ベッドにいる方がずっと幸せ

 

ドラノエ市長さん  ※1

脱出用の箱舟でも用意した方がいいよ

みんなここから逃げ出したいってわかるでしょ

金ピカにしても、パリはもう終わり

朝5時、パリは眠りに落ちる

 

息が詰まりそうで

呼吸が苦しい

顔色も悪いし

小さな椅子の上でぐったりさ

 

もうパリは好きじゃない

いったい僕らは何者なんだろう

誰にも会いたくない

電話も切って

修道女みたいに静かに生きたい

ジョン(レノン)のことじゃないけどね  ※2

やっぱりパリは好きじゃない

 

環状道路を越えて郊外に行くと

貧しい人たちがたくさんいる

彼らは金持ちになれるセンスがないと

のけもの扱いにされるけれど

"光の街" と呼ばれるパリは

パリの郊外、RER線のずっと先の方にある気がするよ  ※3

 

昔のやんちゃなパリっ子はいなくなって

今は上品ぶった連中ばかり

ガラスケースに閉じこめられたようなパリ

こんなパリにイライラする

オーディアールの映画に出てくるような古きよきパリは終わり  ※4

今はエディアール(高級食料品店)のパリになってしまった  ※5

 

もうパリは好きじゃない

いったい僕らは何者なんだろう

人が多すぎる

他人の人生なんてどうでもいい

時間もない

ベッドにいる方がずっと幸せ

 

海を見に行きたい

沈黙する人々の声を聞き

ビールを飲んで

世界中を旅してみたい

 

…それでもパリは

僕の人生そのもの

一番美しい街

僕は断言する

パリしかないことをね

でもそこが困った問題なのさ

やっぱりパリは好きじゃない

 

※1   リリース当時のパリ市長だった Bertrand Delanoë ベルトラン・ドラノエのこと。

※2   "ジョン" はジョン・レノン(John Lennon)のこと。修道女(nonne ノンヌ)と John Lennon(レノン)の発音が似ているための言葉遊びで、フランス語では Lennon は "レノンヌ" に近い発音になります。

※3   RER線(エール・ウー・エール線)は、パリとその郊外をつなぐ高速近郊鉄道。「RER線のずっと先にある」という表現は、「パリ中心ではなく、もっと遠くの郊外に本当の "光の街" があるのでは?」という皮肉や寂しさをこめた比喩です。

※4   Michel Audiard ミシェル・オーディアールはフランスの有名な映画脚本家。彼の作品には、下町のパリを舞台に、人間味あふれる庶民的な世界が生き生きと描かれていたことから、昔ながらの庶民のパリはもうなくなってしまった、という意味。

※5   Hédiard エディアールは、高級食料品店の老舗ブランドで、パリの高級イメージの象徴。

このくだりは「今のパリは庶民的ではなく、高級志向で観光化されたお洒落なだけの街になってしまった」ということを表現しています。

 

パリへの愛と反感という矛盾する気持ちを歌った軽快な曲です

Thomas Dutronc トマ・デュトロンの代表作のひとつ「J’aime plus Paris もうパリは好きじゃない」は、

"大好きな街だけれど、いやなことが多くてもう疲れてしまった" と、パリに対する複雑な気持ちを歌っている曲。

社会格差や都市の矛盾への不満を皮肉たっぷりに並べあげ、

騒音やストレスに疲れて、海辺や静かな場所へ逃げだしたいけれど、

それでも "パリはやっぱり特別な場所" という想いが残ってしまう。

"好きだからこそ苦しくなる" というアンビバレンス(相反する気持ち)が、曲の魅力になっています。

歌詞の中には、父ジャック・デュトロンの名曲「Il est cinq heures, Paris s’éveille 朝5時、パリは目覚める」を意識した表現も登場。

トマはそれを「朝5時、パリは眠ってしまう」と逆転させて、現代のパリへの違和感をさりげなく示しています。

都会に疲れた人が共感しやすいテーマと、正直で親しみやすいユーモアにあふれた歌詞を、

心地よいジプシー・ジャズ(後述)のサウンドにのせて軽快に歌う曲。

光と影のあるパリに対する不満を、シニカルに表現してみても、

最後には「やっぱりパリが好きだ」という気持ちがにじみ出る、心温まる作品です。

 

ジャック・デュトロンとフランソワーズ・アルディの息子、トマ・デュトロンが歌っています

父親は Jacques Dutronc ジャック・デュトロン、母親は Françoise Hardy フランソワーズ・アルディという、ともにフランスを代表するアーティストという芸能一家に生まれたトマ。

若い頃から "ジャズ・マヌーシュ(ジプシー・ジャズ)" の創始者ジャンゴ・ラインハルトに影響を受け、そのスタイルを現代風に取り入れた作品をつくっています。

2007年のファーストアルバム「Comme un manouche sans guitare ギターを持たないジプシーのように」 が大成功し、アーティストとしての地位を確立。

優しい声と言葉を大切にする歌い方で、大規模なショービジネスよりも音楽の本質を重視するトマは、

ヨーロッパのジャズ・マヌーシュ文化を伝えることに強い情熱をもっています。

ギタリストとしても高く評価されていて、"17歳のときにひらめきのように恋に落ちた" と語るギターとの出会いは運命的で、そのギタープレイには純粋な愛が感じられます。

 

ジプシー・ジャズの普及をめざすトマス

"ジャズ・マヌーシュ(Jazz Manouche)" は、フランスを中心に発展したジプシー(ロマ)音楽とジャズが融合した音楽スタイルのことで、"ジプシー・ジャズ(Gypsy Jazz)"ともよばれます。

1930年代、ベルギー出身のギタリスト Django Reinhardt ジャンゴ・ラインハルトが、パリでジャズとロマ音楽を結びつけ、独自のスタイルを確立。

ギター中心のアンサンブルで、軽快で、明るく、跳ねるようなリズムと、アコースティックの温かさがあり、

民族音楽のメロディとジャズのハーモニーが混じりあった独特の響きで、即興演奏(アドリブ)が多いのが特徴です。

昔ながらのパリのカフェや古い映画のような雰囲気があり、どこか懐かしくロマンチック。

この音楽に魅了されたトマは、有名なジプシーギタリストたちと共演して、ジャンゴの伝統を現代に引きつぐジャズ・マヌーシュの継承者の一人でもあります。

この「J'aime plus Paris もうパリは好きじゃない」も収められている、2007年のアルバム「Comme un manouche sans guitare ギターを持たないジプシーのように」も、

ジャズ・マヌーシュの軽やかさと詩的な世界がよく表現されています。

 

 

「J'aime plus Paris もうパリは好きじゃない」の動画

 

オフィシャルクリップです

下のライブ動画は歌詞が一部入れ替わっているので、歌を覚えるのはこちらのクリップでどうぞ。

J'aime plus Paris - Thomas Dutronc (2008)

 

ジプシー・ジャズの雰囲気たっぷりのライヴです

ヴァイオリン、アコーディオンが加わり、ギタリストとしても本領発揮の素敵な演奏です。

後半の歌詞が一部入れ替わっています。

J'aime plus Paris - Thomas Dutronc (2013)

 

フランス・テレビ2のコンサートライヴです

トマのギターとヴァイオリンのセッションが最高で、聴衆もノリノリで盛りあがります。

こちらもやはり後半歌詞に入れ替わりがあります。

J'aime plus Paris - Thomas Dutronc (2023)

 

アルバム「Comme un manouche sans guitare ギターを持たないジプシーのように」のリンクです

「J'aime plus Paris もうパリは好きじゃない」を含む2007年リリースのファーストアルバム。

ジプシー・ジャズの雰囲気をたっぷりとお楽しみください。

(1曲関係ない曲が含まれています)

アルバム「Comme un manouche sans guitare ギターを持たないジプシーのように」のリンク

Thomas Dutronc - Comme Un Manouche Sans Guitare (Full Album)

 

 

Youtube活用メモ

一緒に歌う場合は、テンポを遅めにしたり、ループ再生にすると便利です。

画面をクリックすると右下に出る「歯車マーク」をクリックして、「再生速度」を 0.75 か 0.5 に設定しましょう。

「歯車マーク」の「その他のオプション」(パソコンの場合は右クリック)から「ループ再生」をオンにしましょう。

Youtubeサイトに移動せずに本サイト上で再生するとCMが入りません。

※すぐ歌われる場合は、こちらをクリックしてください。

 

本サイト独自の発音表記について

フランス語をできるだけ正しく発音するために、次のことをご確認ください。

 

シャンソニアネット独自のルビ表記と発音について

r」は「」とひらがなの赤字で表記舌先を下の歯の裏に当てて、喉を震わせて発音します。

鼻母音」は「」を添えて表記鼻から息を抜きながら発音します。

an, em, en, em」は口を大きく縦に開けた「オ」の形で「ア~」と発音オ~」「コ~」「ソ~」「ト~」など青字で表記。「r」につくときは「」。

②「inim, ein, ain, un, um」は口を横に開いた「エ」の形で「ア~」と発音

③「on, om」は、口を丸くすぼめて鼻から「オ~」と発音

 

⇒ その他の発音など、詳しくは「フランス語発音のポイント」「本サイトのルビについて」「歌う前の準備~歌ってみよう」をご参照ください。

 

リエゾンやアンシェンヌマンについて

単語を続けて発音する「リエゾンやアンシェヌマン」の箇所には下線を引いてあります。歌手により異なる場合もあります。

 

 

「J'aime plus Paris もうパリは好きじゃない」フランス語歌詞

単語一つずつではなく、歌のメロディやフレーズに合わせてルビの区切りを入れてあります。

同じ歌手でもアレンジやバージョンによって、また別の歌手が歌う場合なども、歌詞が異なる場合があります。

 

 

印刷用歌詞 PDF(ルビつき&ルビなし)

印刷する場合はフランス語歌詞(ルビつき&ルビなし)のPDFを下記よりダウンロードしてカラー印刷してください。

「J'aime plus Paris もうパリは好きじゃない」歌詞PDF(ルビつき)

「J'aime plus Paris もうパリは好きじゃない」歌詞PDF(ルビなし)

 

ルビつきフランス語歌詞

短めにフレーズを区切って表記していますが、スマホの場合は画面を横長にしてスクロールしながらご覧ください。

 

「J'aime plus Paris もうパリは好きじゃない」

 

Je fais le plein d'essence

ジュ フェ ル プラ~ デソ~

Je pense aux vacances

ジュ ポ~ソォ ヴァコ~

Je fais la gueule

ジュ フェ ラ ゲァル

Et je suis pas le seul

エ ジュ スュイ パ ル スァル

 

Le ciel est gris

ル スィエ

Les gens aigris

ジョ~ エグ

Je suis pressé

ジュ スュイ プッセ

Je suis stressé

ジュ スュイ ストゥッセ

 

J'aime plus Paris

ジェーム プリュ パ

On court partout ça m'ennuie

オ~ クゥートゥ サ モ~ニュイ

Je vois trop de gens

ジュ ヴワ トゥ ドゥ ジョ~

Je me fous de leur vie

ジュ ム フゥ ドゥ ルァー ヴィ

J'ai pas le temps

ジェ パ ル ト~

Je suis si bien dans mon lit

ジュ スュイ スィ ビア~ ド~ モ~ リ

 

Prépare une arche

パー ュナシュ

Delanoë

ドゥラノエ

Tu vois bien

テュ ヴワ ビア~

Qu'on veut se barrer

コ~ ヴゥ ス バ

Même plaqué or, Paris est mort

メーム プラケ オー、パ エ モー

Il est cinq hors, paris s'endort

イレ サ~コー、パ ソ~ドー

 

Je sens qu'j'étouffe

ジュ ソ~ クジェトゥフ

Je manque de souffle

ジュ モ~ク ドゥ スゥフル

Je suis tout pale

ジュ スュイ トゥ パル

Sur un petit pouf

スュ プティ プゥフ

 

J'aime plus Paris

ジェーム プリュ パ

Non mais on se prend pour qui

ノ~ メ オ~ ス プ プゥ

J'veux voir personne

ジュヴゥ ヴワーソンヌ

Couper mon téléphone

クゥペ モ~ テレフォヌ

Vivre comme les nonnes

ヴィヴム レ ノンヌ

J'parle pas de John

ジュ パル パ ドゥ ジョ~

J'aime plus paris

ジェーム プリュ パ

 

Passé le périph

パセ ル ペ

De pauvres hères

ドゥ ポォヴ

N'ont pas le bon goût

ノ~ パ ル ボ~ グゥー

D'être millionnaires

デートゥ ミリオネー

 

Pour ces parias

プゥ セ パ

La ville lumière

ラ ヴィル リュミエー

C'est tout au bout

セ トゥトォ ブゥ

Du RER

デュ エーエー

 

Y a plus de titis

イ ア プリュ ドゥ ティティ

Mais des minets

メ デ ミネ

Paris sous cloche

スゥ クローシュ

Ça me gavroche

サ ム ガヴーシュ

 

Il est fini,

フィニ、

le paris d'Audiard

ル パ ドォディアー

Mais aujourd'hui,

ジュデュイ、

voir celui d'Hédiard

ヴワー スリュイ デディアー

 

J'aime plus Paris

ジェーム プリュ パ

Non mais on se prend pour qui

ノ~ メ オ~ ス プ プゥ

Je vois trop de gens

ジュ ヴワ トゥ ドゥ ジョ~

Je me fous de leur vie

ジュ ム フゥ ドゥ ルァー ヴィ

J'ai pas le temps

ジェ パ ル ト~

Je suis si bien dans mon lit

ジュ スュイ スィ ビア~ ド~ モ~ リ

 

J'irais bien voir la mer

ビア~ ヴワー ラ メー

Écouter les gens se taire

エクゥテ レ ジョ~ ス テー

J'irais bien boire une bière

ビア~ ブワーヌ ビエー

Faire le tour de la terre

フェー ル トゥー ドゥ ラ テー

 

J'aime plus Paris

ジェーム プリュ パ

Non mais on se prend pour qui

ノ~ メ オ~ ス プ プゥ

Je vois trop de gens

ジュ ヴワ トゥ ドゥ ジョ~

Je me fous de leur vie

ジュ ム フゥ ドゥ ルァー ヴィ

J'ai pas le temps

ジェ パ ル ト~

Je suis si bien dans mon lit

ジュ スュイ スィ ビア~ ド~ モ~ リ

 

Pourtant Paris

プゥト~

C'est toute ma vie

セ トゥトゥ マ ヴィ

C'est la plus belle

セ ラ プリュ ベル

J'en fais le pari

ジョ~ フェ ル パ

Il n'y a qu'elle

イル ニ ア ケル

C'est bien l'ennui

セ ビア~ ロ~ニュイ

J'aime plus Paris

ジェーム プリュ パ

 

フランス語歌詞(ルビなし)

リエゾン、アンシェンヌマンの箇所に下線をつけてあります。

 

"J'aime plus Paris"

 

Je fais le plein d'essence

Je pense aux vacances

Je fais la gueule

Et je suis pas le seul

 

Le ciel est gris

Les gens aigris

Je suis pressé

Je suis stressé

 

J'aime plus Paris

On court partout ça m'ennuie

Je vois trop de gens

Je me fous de leur vie

J'ai pas le temps

Je suis si bien dans mon lit

 

Prépare une arche

Delanoë

Tu vois bien

Qu'on veut se barrer

Même plaqué or, Paris est mort

Il est cinq hors, paris s'endort

 

Je sens qu'j'étouffe

Je manque de souffle

Je suis tout pale

Sur un petit pouf

 

J'aime plus Paris

Non mais on se prend pour qui

J'veux voir personne

Couper mon téléphone

Vivre comme les nonnes

J'parle pas de John

J'aime plus paris

 

Passé le périph

De pauvres hères

N'ont pas le bon goût

D'être millionnaires

 

Pour ces parias

La ville lumière

C'est tout au bout

Du RER

 

Y a plus de titis

Mais des minets

Paris sous cloche

Ça me gavroche

 

Il est fini,

le paris d'Audiard

Mais aujourd'hui,

voir celui d'Hédiard

 

J'aime plus Paris

Non mais on se prend pour qui

Je vois trop de gens

Je me fous de leur vie

J'ai pas le temps

Je suis si bien dans mon lit

 

J'irais bien voir la mer

Écouter les gens se taire

J'irais bien boire une bière

Faire le tour de la terre

 

J'aime plus Paris

Non mais on se prend pour qui

Je vois trop de gens

Je me fous de leur vie

J'ai pas le temps

Je suis si bien dans mon lit

 

Pourtant Paris

C'est toute ma vie

C'est la plus belle

J'en fais le pari

Il n'y a qu'elle

C'est bien l'ennui

J'aime plus Paris