フランス語歌詞にカタカナルビをつける目的
フランス語の達人たちは大抵、「フランス語にカタカナのルビはつけられませんよ、発音がまったく違いますからね」 とはっきりおっしゃいます。
とはいえ、フランス語をまったく知らない人がフランス語でシャンソンを歌うためには、初めはどうしてもカタカナルビが必要だと思います。まずは最初の第一歩を踏み出すことが大切ですから。
ですので、お叱りをうける覚悟のもとに、本サイトでは敢えてフランス語の歌詞にカタカナルビをつけてご案内していこうと思います。
将来的に一人でも多くの方々がさらに深くシャンソンを理解してくださり、その背景にあるフランス語圏の歴史文化や社会、人々の生活などに深い関心を持っていただくきっかけになることを願いながら。
あくまでもフランス語で歌うための最初のステップであることを忘れずに、ご自身でフランス語を学びながら少しずつ正確な発音をマスターしていくためにも、出来るだけそれに近いルビを打つことが大切なので、本サイトなりに工夫しています。
練習を重ねて歌い進めていくうちに、今までまったく耳に入らなかったフランス語の発音が、だんだんはっきりと聞き取れるようになっていくことに驚かれると思います。フランス語会話の学習も抵抗なく加速していくようになりますよ。
できるだけ早く、ルビなしでフランス語の歌詞をしっかりと発音して、自由自在に歌えるようになっていただくのが本サイトの目的です。
本サイト独特のルビのつけ方について
この記事では、本サイト独自のルビのつけ方を中心にご案内しています。
フランス語の発音全般については、「フランス語の発音のポイント」でくわしく解説していますのでご参照ください。
フランス語の発音のポイントはたくさんありますが、初めは少なくとも、
「r」の発音と「an, am, en, on, in, ein, un」など鼻母音の発音
だけはしっかりと覚えていただきたいと思います。
この2つは、口の開け方や舌の使い方、音の出し方など、日本語には全くないフランス語特有の発音の中でも、私たちにとって特に難しいものです。
意識して発音していただくために、本サイトならではの独特のルビ表記をしています。マスターするまでには少し時間がかかるかも知れませんが、シャンソンの歌詞の中に度々出てくる発音なので、頑張ってくださいね。
それ以外の発音についても、カタカナ表記であっても出来る限り正しい発音に近づけるようにするために様々な工夫をしています。慣れるまでは大変だと思いますが、繰り返し解説をご参照いただきながら一歩ずつ進めてみてください。
ポイントを意識しながら、歌詞を声に出して、しっかりと口を動かして、何回も何十回も練習してみることが大切です。ひと通り歌えるようになるためにも、さらに上達していくためにも、基本的なことを何度も確認しながら、ただただ繰り返し練習して慣れていくしかありません。
最初は難しかった発音でも、繰り返し練習によって必ず出来るようになります。少しずつ上手く発音できるようになっていく過程も、フランス語でシャンソンを歌っていく楽しみになっていくことでしょう。
そして上手に歌えるようになったときには大きな喜びが待っています。フランス語で歌うことの醍醐味の一つだと思います。少なくとも日本語で歌うときには発音で苦労することはありませんから。何十倍も苦労して得た喜びは、達成した人にしか分からないかも知れません。
「l」と「r」の発音について
例えば「la」「ra」は日本語的には「ラ」としか表記できませんが、フランス語では全く違う音なので、発音を間違えると意味が通じなかったり、別の言葉に解釈されてしまいます。
「l」の発音
「l」の入った単語のルビは普通に「ラ、リ、ル、レ、ロ」と表記してあり、ほぼ日本語の発音と同じですが、舌先を上歯ぐきの裏にしっかりつけて、日本語よりもハッキリと発音してください。
「r」の発音
「r」の入った単語のルビは、赤字のひらがなで「ら、り、る、れ、ろ」で表記してあります。
「r」の発音はフランス語の中でも日本人にとって最も難しい発音の一つなので、マスターするまでは繰り返し練習するしかありません。
前後の子音によって二通りの発音があります。
① 「t, p, ch, s, k, q, c, f」などの子音の前後では、硬い「r」の発音になります。
舌先を下の歯の裏につけて動かさずに、口の奥(喉に近いところ)でうがいをするように震わせて発音します。「ガ、ギ、グ、ゲ、ゴ」に聞こえることもあるような音です。
② もう一つは、「d, b, j, z, g, v, l, m, n」などの子音の前後では、柔らかい「r」の発音になります。
舌先を下の歯の裏につけて動かさないのは同じですが、息を上あごに当てて喉を柔らかく震わせて発音します。「は、ひ、ふ、へ、ほ」に聞こえることもあるような音です。語尾の「r」は柔らかく発音することが多いですが、例外もあります。
本サイトのカタカナルビも、この2種類の「r」の発音の表記は同じになってしまいますので、音源をよく聴いて使い分けましょう。
このような「r」の発音の仕方はパリなどフランス北部の発音で、フランス南部では日本語に近い発音になるそうですが、本サイトでは現代のパリ風の発音で統一したいと思います。
エディット・ピアフなど古い時代の歌手は、「r」を巻き舌で発音している場合があります。「r」の発音は、地域や時代とともにさまざまに変化しているそうで、その変遷を楽しむのも、百年以上も前の歌が今も歌い継がれているシャンソンの世界ならではですね。
鼻母音の発音について
フランス語独特の発音の中に、鼻から息を抜いて発音する「鼻母音」があります。以下のような3種類がありますので、常に意識して発音してみてください。日本人にはなかなか難しい発音ですが、鼻母音をマスターするとグッとフランス語らしくなりますよ。
通常の鼻母音カタカナ表記では「ン」を入れますが、実際の鼻母音は「ン」は発音しない(口を閉じない)で、鼻母音3種類のそれぞれの口の形をして、鼻から息を抜きながら発音します。軽く鼻腔を閉じて息を抜くイメージです。
フランス語の発音記号では、鼻母音記号の頭に「~」が付くことから、本サイトでは母音や子音のカタカナ表記の横に「~」を添えて鼻母音を表記することにしました。慣れるまでは分かりにくいかもしれませんが、少しずつ練習しながらマスターしてみましょう。
①「an, am, en, em」の発音
日本語では、「アン、オン」はそれぞれはっきりと異なる発音になりますが、フランス語では、「アン」と「オン」の中間的な発音があります。
例えば、「chanson」はフランス語では「シャ」と「ショ」の間の音で、どちらかといえば「シャンソン」よりも「ションソン」に近い発音です。「France」は「フらンス」よりも「フろンス」に近く聞こえます。
「an, em, en, em」は、口を大きく縦に開けた「ア~」と「オ~」の中間のような音です。口を大きく開いた「ア」の形から両頬をすぼめるイメージが分かりやすいと思います。その際に下アゴが下がらないようにしましょう。
本サイトでは、敢えて青字で「オ~」「コ~」「ソ~」「ト~」などと表記することで、「アン」と「オン」の中間の音だということを意識しながら発音していただくことをめざしたいと思います。
「r」と組み合わさるときには、「ろ~」と表記しています。
②「in, im, un, um, ein, ain」の発音
「in, im, ein, ain, un, um」は口を横に開いた「エ」の形で「ア~」と鼻から抜いて発音します。
もともとは「un, um」はもう少し口を丸くした「ア~」の発音でしたが、現代では上記の発音とほとんど同じになっています。
③「on, om」の発音
「on, om」は、口を丸くすぼめて鼻から「オ~」と発音します。上唇を突き出すイメージにすると上手く発音できますよ。
この口をすぼめる「オ~」と、口を縦に大きく開ける「オ~」との違いに特に注意しながら、3種類の鼻母音それぞれの発音の違いをはっきり意識して、繰り返し練習してみましょう。
その他の注意すべき発音について
全体的なフランス語の発音については、「フランス語の発音のポイント」で解説していますのでご参照ください。
「ue, eu, œ, œu」の発音
「ue, eu, œ, œu」は「ウ、エ、オ」の中間のような音で2種類あります。日本人にとって難しい発音の一つです。
一つは、あまり口を開けない「オ」の形で力を抜いて「エ」というイメージの発音。本サイトでは「ウ、ウー」または「ウォ」などと表記しています。
Europe ウーろップ(ヨーロッパ)
bleu ブルォ(青)
もう一つは、口を横にやや大きく開いた「エ」から、両頬をすぼめてハッキリ強めに「オ」というイメージの発音です。本サイトでは「ウァ」と表記しています。
シャンソンの歌詞の中に度々登場する「cœur(心)」は「クァーる」と表記しています。人によっては「キャーる」「クェーる」と聞こえる場合もあります。
œuvre ウァーヴる(作品)
neuf ヌァフ(新しい)
fleur フルァーる(花)
以上のポイントをしっかりと意識した上で発音していくだけでも、随分とフランス語っぽい発音になるので、頑張って練習してみてくださいね。
一度に全部をマスターするのは大変だと思いますので、歌の練習を続けていく中で、一つひとつ確認しながら覚えていけばよいと思います。毎日少しずつでも練習していけば、そのうち「ルビなんてジャマだ」と思うようになるでしょう。
本格的な発音については、「フランス語の発音のポイント」に掲載している参考サイトなどで確認しながら、ご自身で少しずつ練習していってくださいね。
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