★作詞 David McNeil デヴィッド・マクニール(フランス語版歌詞)
★作曲 Astor Piazzolla アストル・ピアソラ
★歌 Milva ミルヴァ
★発表年 1982年
ビロードのシーツが
重たく感じるようになったとき
二人の愛を忘れる
夜更けのバーで聴いたメロディも
頬よせあって踊ったことも
私は忘れる
短い一夜が過ぎ去り
振り返ることなく駅で別れ
そして私は忘れる
忘れる
ゆったりとしたバンドネオンの調べにのせて、甘く、切なく、時に情熱的に歌われる、不思議な魅力に満ち溢れた名曲です。
クロード・ヌガロとリシャール・ガリアノが、尊敬するアストロ・ピアソラに捧げて作った「Vie violence ヴィー・ヴィオロンス(人生と暴力)」の記事でご紹介したように、ピアソラはアルゼンチンタンゴに革命を起こした作曲家・バンドネオン奏者です。フランスで作曲を学んだこともあり、晩年はパリに住んでいました。
イタリア映画「エンリコ4世」(1984年製作、マルコ・ベロッキオ監督、マルチェロ・マストロヤンニ主演)のテーマ曲としてピアソラが作曲したのがこの「J'oublie (Oblivion) 忘却」です。もとはイタリア語の歌詞でしたが、のちにアメリカ人作曲家デヴィッド・マクニールによりフランス語歌詞が作られました。
ミルヴァはイタリア出身の歌手・女優で、サンレモ音楽祭に13回出場するなど「カンツォーネの女王」と呼ばれました。日本でも人気が高く度々来日公演して、ザ・ピーナッツの「ウナセラディ東京」を日本語で歌い、その後大ヒットさせるきっかけを作るなど、日本との関わりの深いアーティストです。
中でも、「J'oublie (Oblivion)」も歌われた1988年の東京公演(中野サンプラザホール)は、ピアソラとミルヴァのコラボレーションの集大成といわれ、音楽史に残るほど評価が高く、今もなお語り継がれています。
何年のライヴか不明ですが、貴重なライヴ動画です。燃えるような赤毛のミルヴァが熱唱しています。バイオリンとバンドネオンのむせび泣くような豊かな音色と心震わす響きが、ミルヴァの歌唱力と共鳴しあって、聴く者の胸にジーンと響きます。
J'oublie (Oblivion) - Milva
1984年、ピアソラとミルヴァのコラボが始まったブッフ・デュ・ノール劇場(パリ)での公演ライヴ音源。歌を覚えるのはこの動画でどうぞ。
J'oublie (Oblivion) - Milva (1984)
オランダ人ジャズ歌手Marlies Claasen マルリース・クラーセンが、ハンガリー人とオランダ人がコラボするカルテット(The Budapest Saxophone Quartet)の演奏をバックに歌っています。ちょっとjazzyにさらりと歌う場合の参考になるかもしれません。
J'oublie (Oblivion) - Marlies Claasen (2013)
アストル・ピアソラが奏でるバンドネオンの音色は、内に秘めた情熱が溢れ出すようで、ストレートに胸に響きます。アルゼンチンタンゴ好きにはたまりません。
J'oublie (Oblivion) - Astor Piazzolla
※アコーディオンとの違いを含めて、バンドネオンについて詳しく解説しているサイトがありましたので、ご参考まで。
Youtube活用メモ
一緒に歌う場合は、テンポを遅めにしたり、ループ再生にすると便利です。
*画面をクリックすると右下に出る「歯車マーク」をクリックして、「再生速度」を 0.75 か 0.5 に設定しましょう。
*画面を長押し(パソコンの場合は右クリック)して「ループ再生」をオンにしましょう。
*Youtubeサイトに移動せずに本サイト上で再生するとCMが入りません。
※すぐ歌われる場合は、こちらをクリックしてください。
歌う前の確認事項
歌う前に以下のことをご確認ください。できるだけ正しいフランス語を発音するために、とても大切なポイントです。
⇒ 「フランス語発音のポイント」「本サイトのルビについて」「歌う前の準備~歌ってみよう」で詳しく解説していますのでご参照ください。
⇒ フランス語シャンソン初心者の方は、「フランス語で歌うシャンソン入門講座」から始めてください。
本サイト独自のルビ表記と発音について
★「r」は「ら、り、る、れ、ろ」で表記。口の奥を震わせて発音します。前後の子音によって硬い「r」と柔らかい「r」の二通りの発音があります。
★「鼻母音」については、鼻から息を抜きながら母音を発音する(口を閉じて「ン」と発音しない)ので、本サイトでは母音や子音のカタカナ表記の横に「~」を添えて鼻母音を表記しています。軽く鼻腔を閉じて息を抜くイメージです。
①「an, em, en, em」は、口を大きく縦に開けた「ア~」と「オ~」の中間のような音。青字で「オ~」「コ~」「ソ~」「ト~」など青字で表記。「r」につくときは「ろ~」と表記しています。
②「in, im, ein, ain, un, um」は口を横に開いた「エ」の形で「ア~」と鼻から抜いて発音。
③「on, om」は、口を丸くすぼめて鼻から「オ~」と発音。
リエゾンやアンシェンヌマンについて
リエゾンやアンシェヌマンしている箇所には下線を引いてあります。歌手により異なる場合もあります。
日本語訳
日本語訳や曲の解説をしているお勧めのサイトはこちらです。
⇒ 朝倉ノニーの歌物語「J'oublie (Oblivion) 忘却」
「J'oublie (Oblivion) 忘却」歌詞
単語一つずつではなく、歌のメロディやフレーズに合わせてルビの区切りを入れてあります。同じ歌手でもアレンジやバージョンによって、また別の歌手が歌う場合なども、歌詞が異なる場合があります。
「J'oublie (Oblivion) 忘却」の発音・歌い方のポイント
Dalida ダリダ同様、ミルヴァも相当なイタリア語訛りがあるので、特に「R」の発音などをそのまま真似ないように気をつけながら、ゆったりと伸びやかに歌ってみましょう。
印刷用歌詞(PDF)
印刷する場合は歌詞(ルビつき&ルビなし)のPDFをダウンロードしてカラー印刷してください。
⇒「J'oublie (Oblivion) 忘却」歌詞(PDF)
ルビつき歌詞
短めにフレーズを区切って表記していますが、スマホの場合は画面を横長にしてスクロールしながらご覧ください。
「J'oublie (Oblivion) 忘却」
Lourds,
ルゥーる、
soudain semblent lourds
スゥダ~ ソ~ブル ルゥーる
les draps, les velours
レ ドゥら、レ ヴルゥーる
de ton lit
ドゥ ト~ リ
quand j'oublie
コ~ ジュブリ
jusqu'à notre amour…
ジュスカ ノートらムゥーる
Lourds,
ルゥーる、
soudain semblent lourds
スゥダ~ ソ~ブル ルゥーる
tes bras qui m'entourent
テ ブら キ モ~トゥる
déjà dans la nuit
デジャ ド~ ラ ニュイ
un bateau part,
ア~ バトー パーる、
s'en va quelque part
ソ~ ヴァ ケルク パーる
les gens se séparent,
レ ジョ~ ス セパーる、
j'oublie, j'oublie...
ジュゥブリ、ジュブリ
Tard, autre part
ターる、オートる パーる
dans un bar d'acajou
ド~ザ~ バる ダカジュゥ
des violons nous rejouent
デ ヴィオロ~ ヌゥ るジュウ
notre mélodie, mais j'oublie...
ノートる メロディ、メ ジュゥブリ
Tard, dans ce bar dansant
ターる、ド~ ス バる ド~ソ~
joue contre joue
ジュゥ コ~トる ジュゥ
tout devient flou
トゥ ドゥヴィヤ フルゥ
et j'oublie, j'oublie...
エ ジュゥブリ、ジュゥブリ
Court,
クゥーる、
le temps semble court
ル ト~ ソ~ブル クゥーる
le compte à rebours
ル コ~プトゥ ア るブゥーる
d'une nuit
デュヌ ニュイ
quand j'oublie
コ~ ジュゥブリ
jusqu'à notre amour...
ジュスカ ノートらムゥーる
Court,
クゥーる、
le temps semble court
ル ト~ ソ~ブル クゥーる
tes doigts qui parcourent
テ ドワ キ パるクゥーる
ma ligne de vie.
マ リーニュ ドゥ ヴィ
Sans un regard,
ソ~ザ~ るガーる、
des amants s'égarent
デザモ~ セガーる
sur un quai de gare,
スュら~ ケ ドゥ ガーる、
j'oublie, j'oublie...
ジュゥブリ、ジュゥブリ
フランス語歌詞(ルビなし)
リエゾン、アンシェンヌマンの箇所に下線をつけてあります。
"J'oublie (Oblivion)"
Lourds,
soudain semblent lourds
les draps, les velours
de ton lit
quand j'oublie
jusqu'à notre amour…
Lourds,
soudain semblent lourds
tes bras qui m'entourent
déjà dans la nuit
un bateau part,
s'en va quelque part
les gens se séparent,
j'oublie, j'oublie...
Tard, autre part
dans un bar d'acajou
des violons nous rejouent
notre mélodie, mais j'oublie...
Tard, dans ce bar dansant
joue contre joue
tout devient flou
et j'oublie, j'oublie...
Court,
le temps semble court
le compte à rebours
d'une nuit
quand j'oublie
jusqu'à notre amour...
Court,
le temps semble court
tes doigts qui parcourent
ma ligne de vie.
Sans un regard,
des amants s'égarent
sur un quai de gare,
j'oublie, j'oublie...